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2014年8月23日土曜日

Keeper of The Seven Keys / Helloweenの歌詞の考察~鍵を投げなければお前は死ぬ



先日実家に帰った時に、昔のCDを回収してきました。
物置に置いてあったCDは片っ端から捨てられてしまっていたのですが、自分の部屋に持ってきておいたものはなんとか無事で被害はそれほどありませんでした。

この曲が収録された「KEEPER OF THE SEVEN KEYS-PART II」は1988年のアルバムのようで、実に26年前のアルバムです。

邦題は「守護神伝」で、PART II とあるように第一章、第二章の2章立てとなっていて、七つの鍵の守護者である主人公が世界を悪魔の手から解放するために旅立つという、いわゆるコンセプトアルバムのようです。

なかでもこの曲、Keeper of The Seven Keysはその最後を飾る、これらのアルバムの主題ともいうべき曲で、13分37秒もある大作となっています。

とてもドラマチックな曲で、まるで映画を見ているような展開に何度聞いても感動します。

それで何気なく歌詞カードを眺めていたのですが、「ちょっとこれは…」という翻訳が目につきました。

throw the key or you may die

という歌詞なのですが、歌詞カードの和訳は

鍵を捨てたら死んでしまうぞ

となっていました。これは全く逆です。正しくは「鍵を投げなければお前は死んでしまうぞ」です。

この曲の世界観では、鍵の守護者である主人公が、七つの海に1つずつ鍵を投げ入れて封印することで世界を守ることになっていて、鍵を投げることが大前提なのです。

ですから、この和訳はあまりにもお粗末であり、流石に看過出来かねました。このような初歩的な間違いがあるということは、恐らく他の部分でも間違いがあるのではないかと十分に推察でき、一通り翻訳してみることにしました。

外国語の歌詞の翻訳においては翻訳権というのが存在していて、勝手に和訳を行って公開することは少々問題があるのですが、個人的にはこういった、本来の歌をゆがめているおかしな翻訳は作詞者を冒涜していると考えていて大嫌ですし、非営利目的での研究を目的とした引用は法的に認められていて、調べてみると歌詞全体でおかしなところだらけですので全文を引用して、正しいと思われる歌詞の考察を行っていくことにします。


Make the people hold each other's hands
and fill their hearts with truth
you made up your mind so do as divined 
人類が手を握り合える世界を創らなくちゃいけない
みんなの心を真実で満たすんだ
心を決めたおまえ
運命の定めに従え 


You must ~ 等で始まっているならそういう訳でもよいでしょうが、ここは~しなければならないと訳すのは変です。Make the people ~は、人々に~をさせる、という意味です。「運命に従え」と命令形になっていますが、であれば、最初のyouはなく、make upで始まるはずです。

人々に互いに手を取らせ、彼らの心を真実で満たさせる
予言に従い、お前は心をそのように固めた。

となります。


Put on your armour ragged after fights 
hold up your sword 
you're leaving the light
よろいを身につけろ 
戦いの後でボロボロになっても 
剣をかかげろ 
光のもとを去るおまえ

とにかくいろいろと滅茶苦茶なのですが、まず手に取るべき鎧について、raggedは形容詞なので、armour raggedでひとくくりで、「ぼろぼろになった鎧」です。ragged after fightsをそのあとのhold up your swordに結び付ける論理的根拠が全くありません。

また、「光のもとを去るおまえ」とありますが、それであれば

you're leaving "from" the light.

であるはずです。この場合のleaveは去るではなく、残すだと思われます。ですから、

闘いでボロボロになった鎧を手に取れ 
剣を掲げよ 
お前はまだ光を残している(または、お前はまだ光の下にいる)

が正しいでしょう。

make yourself ready for the lords of the dark 
they'll watch your way 
so be cautious, quiet and hark
心の準備をしろ 
ヤツらはおまえを狙うだろうから 
用心深く、静かに進め

ここはあまりおかしな訳にはなっていませんが、正しく訳すと

闇の主との戦いの準備をしろ 
奴らはお前の行く手を監視するだろう
だから慎重に、静かに、耳を研ぎ澄ませ

といったところでしょうか。

You hear them whispering in the crowns of the trees 
you're whirling 'round but your eyes don't agree 
will 'o' the wisps misguiding your path 
you can't throw a curse without takin' their wrath
木々の頂から 
ヤツらの囁きが聞こえる 
あまえはグルグル回っているけど 
その目は疑っている
鬼火の魂が 
おまえを迷い道に誘う 
呪いをかければ 
ヤツらの怒りをかうだけさ 

鬼火の魂とあるのは恐らく、「will」を魂と訳したのだと思いますが、will-o-the-wispで、鬼火です。

お前は木々の上で、奴らが囁くのを聞く 
お前は彷徨い歩くが、目に見えるものを信じていない 
鬼火がお前を道に迷わせる 
彼らの怒りを買う事なく、呪いを投げることはできない

こんな感じでしょうか。

Watch out for the seas of hatred and sin 
or all us people forget what we've been 
our only hope's your victory 
kill that satan who won't let us be--kill!
憎しみと罪の海から教訓を学ばないと 
俺たちはみんな人間性を失ってしまう 
勝利こそが唯一の望み 
俺たちを縛っている悪魔を殺すのだ

Watch out for the seasで、「教訓を学ぶ」という発想は少々理解に苦しむところです。前にも書きましたが、七つの海を封印することが目的であり、そこから教訓を得ようという物語ではありません。

また、「勝利こそが唯一の望み」については、何故連体修飾語を省いたのか理解できません。この歌は鍵の守護者である主人公について歌っている歌で、主人公の勝利こそが我々の望みなのです。

憎しみと罪の海に気をつけろ 
でなければ人々は、自分たちが何であったのかを忘れる 
我々の唯一の希望はお前の勝利だ 
我々が我々であることを阻む魔王を殺せ。殺せ!

さて、サビに移ります。

You're the keeper of the seven keys that lock up the seven seas 
and the seer of visions said before he went blind 
hide them from demons and rescue mankind 
or the world we're all in will soon be sold 
to the throne of the evil payed with Lucifer's gold 
おまえは七つの鍵の守護神 
七つの海を支配する 
幻の預言者が目くら(ママ)になる前に言った 
悪魔から身を隠し人類を救うのだ 
さもなくばこの世は 
悪魔の黄金に目がくらんだ邪悪な者たちの手中に堕ちてしまうぞ

1988年だけあって差別表現がありましたが、そのまま記載しましたことをお許しください。

まず「七つの海を支配する」ですが、lock up the seven seasですから「支配」ではなく「封印」です。

また、「予言者がめしいる前に言った」とありますが、預言者についての記述なので、多分このblindは目が見えなくなったことを意味するものではなく、未来を予知できなくなったことを指しているのだと思います。

「悪魔から身を隠し人類を救うのだ」については、hide "them"が完全にどこかに消えてしまっていて、まるで主人公が隠密行動を行うように勧めているかのようです。これは完全に間違いです。

加えて、ルシファーは堕天使であり、悪魔と訳すのはあまり適切ではない気がします。

お前は七つの海を封印する事が出来る、幻想の預言者が啓示を失う前に語った七鍵の守護者 
彼らを悪魔たちから隠し、人々を救え 
でなければ我ら全てが生きるこの世界は間もなく 
ルシファーの黄金と引き換えに邪悪の王に売り払われる

二番に移ります。

You can feel cold sweat running down your neck 
and the dwarfs of falseness throw mud at your back 
Guided by spells from the old seer's hand 
you're suffering pain only steel can stand
首筋を伝って 
冷汗が流れおちる 
虚飾の小人たちが 
おまえの背中に泥を投げつける 
老いた預言者の手から放たれる 
呪いに導かれ 
鋼鉄のみが耐え得る痛みに 
苦しめられるおまえ

ここは大体同じ翻訳になりました。

お前は首を伝う冷たい汗を感じる 
不誠実なドワーフたちがお前の背中に泥を投げつける 
老いた預言者の手によって書かれた呪文に導かれ 
お前は鋼でなければ耐えられないような痛みに苦しめられる

ブリッジに入ります。

Stay well on your way and follow the sign 
fulfill your own promise and do what's divined 
the seven seas are far away 
placed in the valley of dust heat and sway
しっかりとした足どりで啓示に従って進め 
誓約を果たし定め通りの行動をとるのだ 
七つの海は遥か彼方 
ほこりと熱と動揺のまっただ中にある

なぜ「しっかりとした足どり」のような訳をするのか分かりません。直訳すれば「お前の道中でお前を良い状態に保て」ですから、足の運び方については何も言及していないのです。

valleyもどこかに消えてしまっています。この翻訳者は、いろいろと単語を勝手になかったことにしてしまっています。

道を見失うな、導きに従え 
お前の約束を果たし、予言の通りに行動せよ 
七つの海は遠い 
それは灼熱で揺れ動く埃の谷の中にある

この後サビが入り、そのあと物語は急展開します。

Throw the first key into the sea of hate 
throw the second key into the sea of fear 
throw the third key into the sea of senselessness 
and make the people hold each other's hands 
the fourth key belongs into the sea of greed 
and the fifth into the sea of ignorance 
第一の鍵を憎しみの海に投げ入れよ 
第二の鍵を恐怖の海に投げ入れよ 
第三の鍵を愚劣の海に投げ入れよ 
そして人々が手を握り合うようにするのだ 
第四の鍵を貪欲の海に投げ入れよ 
第五の鍵を無知の海に投げ入れよ

senselessnessは適切な日本語が無さそうですが、ここは全体としてはそれほど難しい歌詞でもないので大体そのままです。

1番目の鍵を憎しみの海に投げ入れよ 
2番目の鍵を恐れの海に投げ入れよ 
3番目の鍵を無関心の海に投げ入れ
人々に互いの手を握らせよ 
4番目の鍵を貪欲の海に投げ入れ
5番目の鍵を無知の海に投げ入れよ

5つの鍵を投げ入れ海を封印したころ、悪魔は世の中に疫病を流行らせます。

Disease, disease, disease my friend 
for this whole world's in devil's hand 
Disease, disease, disease my friend 
throw the key or you may die 
病気だ 友よ、病に犯されるのさ 
この世は悪魔の手中に堕ちた 
病気だ 友よ、病に犯されるのさ 
鍵を捨てたら死んでしまうぞ

「病におかされるのさ」で、ちょっと笑ってしまいました。どう読んでも「病気がやって来た」としか言っていません。ヘビーメタルやハードロック系の歌詞カードをみると「~だぜ」とか「~だろ?」とか少々頭の弱そうな翻訳が目白押しなのですが、もう少し作詞者の尊厳を守るような翻訳をしていただきたいものです。

また、「この世は悪魔の手中に"堕ちた"」であれば

this world has been in devil's hand

のように過去分詞になると思われ、forで始まっていることを考えると、「この世を悪魔の手に堕とす病がやって来た」という意味だと解釈すべきだと思います。

そして最初に書いた通り、「鍵を捨てたらしんでしまうぞ」です。「鍵を投げること諦めたら死んでしまうぞ」ならわかるのですが、この翻訳は酷過ぎます。

病、病だ、病がやってきた我が友よ 
この世は悪魔の手に落ちる
病、病だ、病がやってきた我が友よ 
鍵を投げ入れよ、でなければお前は死ぬことになるぞ


さて、クライマックスに入ります。ここからがとても興奮する展開なのですが、やはり翻訳は変でした。

On a mound at the shore of the last sea 
he is sitting, fixing your sight 
with his high iron voice causing sickness 
he is playing you out with delight 
最後の海の浜辺の小高い丘に 
ヤツは腰をおろしおまえの視界を操作する 
高い金属的な声が病気を呼び寄せ 
奴はおまえを快楽攻めにする

まず、with his high iron voice causing sickness ですが、文章を簡単にすると with his voice that causing sickness であり、「病気の元凶となる彼の声で」です。「高い金属的な声が病気を呼び寄せ」などという訳は、文法を全く理解していません。

最後の海の海岸にある丘の上で 
奴は座り、病の原因となる甲高い鉄の声でおまえの視界を操作し
奴はおまえを快楽で弄ぶ


そして、最後の一番盛り上がる部分においては全く意味不明な翻訳になっています。恐らく訳者は歌詞の意味を理解できていないでしょう。

man, who do you just think you are? a silly bum with seven stars, 
don't throw the key or you will see dimensions cruel as they can be 
don't let him suck off your power, throw the key, throw the key, throw the key! 
自分を何様だと思っているんだ? 
七つの星を手にした愚か者 
鍵を投げたら、恐ろしく残酷な時空が 
現れ出るのだ 
ヤツに力を吸い取られちゃいけない 
鍵を投げろ……!

この部分は恐らく、2人の視点によって描かれています。前半は悪魔が主人公に対して語っている内容であり、最後の一節はこの物語の語り手の言葉です。括弧でくくると、物語が理路整然とするでしょう。

「お前は自分を何様だと思っているのだ? 七つの星を持った愚かなろくでなしよ
鍵を投げるな、でなければお前の仲間と同じように残酷な世界をお前も見ることになるぞ」
奴にお前の力を吸い取らせるな、鍵を投げろ!

全体的に見て、この翻訳者は or の用法をほとんど理解していないようです。有名なところではDead or Aliveなどがありますが、or は正反対の事柄を並べるときに使い、一般的にはAしなければBになる(だからAをしろ)という風に使います。

An earthquake, squirting fire, bursting ground 
Satan's screaming, and earth swallowing him away! 
地震、噴火、地割れ 
悪魔が叫び、大地がヤツをのみ込む!

どうやら主人公は、無事に最後の鍵を海に投げ入れたようですね。

地震がおこり、炎が噴き出し、台地が裂ける 
魔王は叫び声をあげ、地球が奴を飲み込んで行く

さて、エピローグです。

You're the keeper of the seven keys you locked up the seven seas 
and the seer of visions can now rest in peace 
there ain't no more demons and no more disease 
and, mankind, live up, you're free again 
yes the tyrant is dead, he is gone, overthrown 
you have given our souls back to light 

おまえは七つの鍵の守護神 
七つの海に鍵をかけたのさ 
幻の預言者もこれで安らかな眠りにつける 
もう悪魔も災いも現れまい 
そして人類は生き続け 
おまえは再び解放される 
暴君は死んだ 王座を追われ消え去ったのだ 
おまえは人類の魂に再び光を与えたのだ

また「鍵をかけたのさ」です…。「鍵をかけた」で良いと思うのですが、こういうのがカッコいいと感じる感性は理解できません。

また、「預言者も安らかな眠りにつける」というとまるで死んでしまうようですが、restとしか言っていないので、殺してしまうのはあんまりではないかと思います。

さっきまで「病気が来た!」という歌詞だったのに、突然 no more disease を、「災い」と訳すのも全く意味がわかりませんし、you're free again を「おまえは再び解放される」というように未確定な表現を用いるのも理解不能です。

そして、you have given our souls "back" ですから、「与えた」ではなく「戻した」ですね。

お前は七鍵の守護者、七つの海を封印した 
幻想の預言者は今は安らかにその身を休める 
二度と悪魔も病も蔓延ることはなく、 
人々は生きながらえ、お前は再び自由となった 
そう、暴君は死んだ、去った、滅ぼされた 
お前は我々の魂を光の下へ還した


四半世紀前の翻訳とはいえ、英文法自体が変わってしまったことなどあるはずがないので、これはさすがに、あまりにも適当すぎるのではないかと苦言を呈したいところです。

1 件のコメント:

  1. 久しぶりにこの曲を聴いたら、
    懐かしくなって歌詞を検索していた所、
    たまたまこのポストを発見しました。

    仰るように、翻訳には確かに間違えている部分も散見されます。

    が、粗を探そうと必死になりすぎて、
    間違えていない部分や正しい部分を、間違えていると指摘して、
    ただ言葉を変えているだけだったり、むしろ間違えてしまったりしております。

    -----

    1番最初の 〜しなければならない、
    という翻訳は特段間違えてはいません。
    というのも、命令形だからです。

    〜しなさい と 〜しなければならない、
    言葉の強さは若干違えど、意味の方向は同じです。

    -----

    put on the armour ragged after fight

    英語は右に進んでいく言語です。
    鎧を身につけろ、戦いの後でボロボロになっている
    、のように英語話者は理解します。

    なので、翻訳のように進んでも何ら間違いではありません。

    -----

    leave the light

    fromが無くても、〜を去るという意味にはなります。

    この文自体がかなり抽象的なので、翻訳が間違えているとも、投稿者様の訳が正しいとも言えません。

    -----

    hide them from demons〜

    これは翻訳と双方間違えているかと。

    人物ではなく、これは鍵を指しています。
    というのも、この前に出てくる複数形のものは keys か seas しかありませんので。
    (seasではないのは、この後の歌詞から理解できます)

    -----

    stay well 〜 の翻訳が、しっかりとした足取りになるのは理解できます。
    というのも andで続く次の文がfollowで始まるからです。

    直訳の、気を確かに啓示に従え、と意味としては同じです。

    今回のfollowは従うという言葉が最適ですが、
    そもそもの意味は 追う なので、足取りには関係します。

    -----

    for this whole world's in devil's hand 

    このforは、理由のforです。
    世界は悪魔の手中にあるから、というのが直訳です。

    なので、翻訳が正しいです。

    -----

    with his high iron voice causing sickness 

    これも翻訳は特段間違えてはいません。
    むしろ、with his voice that causing sicknessが文法的に間違えてますね。isが抜けてます。

    with 人・物 〜ingという文法があります。

    この歌詞の場合、彼の金切声が病を引き起こしている状態で、みたいな意味になります。

    そして、翻訳と投稿者様の訳は意味的には全く同じです。

    -----

    それと、rest in peaceは 基本的に、というかほぼ100%が死者への弔いの言葉です。
    人の死が死んだ時に投げかけたり、墓に刻む言葉です。

    生きている人に向かって言うのは、冗談で言う以外に聞いた事がありません。

    -----

    ネット上に散見される野良翻訳者(悪意はありません)は、歌詞に思い入れがあるからでしょうが、しばし意訳をしすぎてしまう事があります。

    翻訳をする際、多分 や 恐らく、のように憶測で決めつけてはいけません。

    作詞者による歌詞のガイドラインがあれば別ですが、
    ガイドラインが無い場合、抽象的な言葉の意味を私見で勝手に判断するのは良くない事です。

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